顧客と密接に交わり
葬祭の前後へと事業の幅を広げる
株式会社西村交益社
遺言状作成や家屋解体も受ける
同社は1961年、大工だった西村正司社長の父親が自宅葬向けにひつぎや位い 牌はいを作る葬具業として創業しました。その後、葬儀の形態が自宅葬から外部のホールを借りて行う会館葬へ変わっていくことを見越し、「機を見るに敏な父は、いち早く霊きゅう車事業に進出しました。さらに会館事業にも投資するなど、常に先んじて手を打ってきました」と、西村社長は市場の変化を捉えた先代の経営手腕を冷静に評価します。
しかし、近年は葬儀の形態が会館葬から近親者のみで開く個人葬へとシフトしつつあります。加えて、全国的に見ると亡くなる人の数は2040年まで増え続けますが、高齢化が進む地方では既にピークを越えており、地方の葬儀社は葬儀の規模、数ともに縮小する厳しい環境に直面しています。
そこで、同社は10年ほど前から、亡くなる前と亡くなった後に着目し、遺言状の作成から遺品整理、家屋解体に至るまで、それぞれの専門業者と連携しながら葬儀以外の商品やサービスに事業を広げてきました。「業者に任せきりにするのではなく、当社のスタッフが介入することで、安心して適正なサービスを受けられるようにしている点が特長です」
事業の拡大には、西村社長が入社した1988年以降、葬儀のデータを全て残し、命日にお供えを持って訪問するほか、葬儀に関する知識や同社のサービスを載せた会員情報誌を年2回配布するなど、顧客と密な関係を築いてきたことも寄与しています。
成長するよりもつぶれない会社に
養父市内には葬儀業者が3社あります。今後、市場は縮小し競争が激化することが予想される中、西村社長は自社の事業の強み、弱みを客観的に知りたいと、ひょうご産業活性化センターのひょうご中小企業技術・経営力評価制度を利用しました。「養父市の利子補給が受けられることも後押しになりました」。結果は、優良賞を受賞するほどの高評価でした。「商品、サービスだけでなく、財務面において実質無借金経営を実現していること、組織面では自分にできないことは得意な社員に委ね、私がいなくても回る組織にしてきたことを評価してもらえたのがうれしく、やってきたことが間違いでなかったと自信
が持てました」
西村社長が目指すのは「成長するよりもつぶれない会社」。今年度からは葬儀をはじめ、商品、サービスについて幅広く相談を受け付ける「お葬儀まるごと解決相談センター」を開設し、より地域に密着した事業を展開しようとしています。