廃食油リサイクルで脱炭素に貢献
東南アジアへの進出も視野に
浜田化学株式会社
廃食油を工業用油や燃料油に
尼崎市の臨海部にある同社の本社工場には、全国のコンビニエンスストアや外食店から回収された廃食油が専用トラックに積まれて集まってきます。廃食油は植物性油脂や動物性油脂などに分別されてから、タンクで油脂分だけが分離、精製され、工業用樹脂原料油、船舶や飛行機の燃料油などの原料に生まれ変わります。
戦後間もないころ、岡野嘉市社長の祖父がおがくずせっけんの製造で創業。原料には食品会社から回収した油脂を使っていました。その後、外食産業の発展につれて廃食油の処理に困っていた飲食店からの回収依頼が増え、主力事業を廃食油回収サービスへと切り替えます。回収量の増加に合わせ、出口となる再生品はせっけんから工業用脂肪酸や各種燃料油などに広がり、現在、同社の廃食油回収量は全国の7.6%を占めるまでになりました。
数ある同業者の中でも同社が際立っているのは、常に新しい挑戦を続けていること。例えば、農業や飲食事業も展開し、食品かすを活用した低炭素型農業を実践するなど、食産業における持続可能な循環モデルづくりに取り組んでいます。「1社でできることは限られます。当社“と”一緒にさまざまな課題を解決していこうとの思いを込め、『Hamadato』のブランディングも進めています」
今年の「SDGs Week EXPO」に出展
兵庫県は、県内企業のSDGsに関する取り組みを評価・認証する「ひょうご産業SDGs認証事業」を推進しています。同社は2023年12月、1,000社を超えるSDGs推進宣言企業から、最上位ランクに当たるゴールド企業6社のうちの1社に認証されました。
ゴールド認証企業は、低利融資「SDGs支援貸付」を利用できる他、展示会への出展支援も受けられます。「現在、サステナブル燃料の開発に向けた実証機の導入を検討中で、その投資のためにSDGs支援貸付の活用を考えています」。また、12月に東京ビッグサイトでの「SDGsWeek EXPO」に設けられる兵庫県ブースへの出展も決まりました。「今後、関東の廃油回収拠点の強化を考えており、そのアピールにつなげたい」と期待を込めます。
来年の大阪・関西万博では、食のパビリオンのSDGs部会長を務める岡野社長。「万博を契機に飲食事業者がサステナブルかどうかをチェックし、毎年公表する仕組みを構築する計画を進めています。2050年までにカーボンニュートラル社会を築くためにも、当社だけでなく業界全体が発展していくことが大事」と語ります。さらに「東南アジアに目を向ければ、日本以上に廃油処理の課題を抱えています」と、近い将来の海外進出を視野に入れるなど、同社の活躍の場はさらに広がりそうです。