コンクリートの長寿命化に貢献
“貼る”屋根補修材で淡路から世界へ
恵和株式会社
樹脂シートの新たな需要を開拓
1948年に神戸市で創業以来、コピー用紙をくるんで湿気から守る防湿包装紙などの機能紙を製造していましたが、90年代前半に液晶のバックライトに使う光学シートの開発に成功。以降、液晶テレビを主として事業を大きく伸ばしていきます。しかし、リーマン・ショックで大打撃を受け、経営の安定化を図るべく新事業の創出に果敢に挑んでいくことになります。その役割を任されたのが、当時経営企画室の室長だった足利正夫社長です。「初めは失敗続きでしたが、あらゆる業界に飛び込み課題を聞き出す中で手応えがあったのがコンクリート用保護シートです」
大手鉄道会社からコンクリート壁補修用途で開発依頼を受けたことがきっかけでした。従来は塗料を塗り重ねて補修していましたが、「5層を5日かけて塗り直さなければならないなど時間を要し、職人の腕次第で品質にばらつきもあったことが課題でした」。塗料をシート状にするために特殊な素材を開発し、複雑な形状の場所にも貼れるよう伸縮性を持たせました。初めから100%を目指すのではなく、「試しながら改良を繰り返す」をモットーに根気強く完成品へと仕上げていきました。
さらにハウスメーカーなどへのヒアリングから雨漏り対策にも着目。2022年末、耐用年数最大50年を実現させた屋根用保護シート「KYŌZIN Re-Roof®」を大々的に公開し、全国の施工業者をパートナーに販路を拡大。廃棄物を出さず環境負荷の低減にも寄与する工法として、JFEグループなど大手企業の工場を中心に採用が進んでいます。
国生み神話の島から世界を目指す
「KYŌZIN Re-Roof®」販売のタイミングに合わせ、コンクリート用保護シート事業の発展を見据え、新たに拠点を設けることにしました。研究開発や製造の拠点が集積する近畿エリアを中心に情報を収集し、進出地として決めたのが淡路市でした。「当社が求める面積を確保できたことに加え、ゼロから事業を育て世界へ出ていく出発地として、国生み神話ゆかりの淡路島がふさわしいと考えました」と足利社長。完成した新拠点「淡路ベース」は海の見えるカフェテラスも備えています。
課題だった雇用についても、ひょうご・神戸投資サポートセンターから地元採用について助言を受けたことで、目標の人数を採用できました。「当社のニーズを踏まえ、きめ細かいサポートを受けられました」。現在、淡路ベースの従業員は製造、施工開発など15人ですが、今後は機能、規模とも拡張する予定です。企業や店舗の屋根、壁を中心にさらに商品力に磨きをかけるとともに用途を広げ、その先には海外市場への進出も見据えています。