カフェメニューを開発し
地域全体が潤う観光農園を目指す
株式会社丹波篠山大内農場
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観光農園事業でブランド力向上を
深秋に差しかかるころ、同農園には近隣府県から丹波黒大豆の収穫体験を目当てに多くの観光客が訪れます。 「体験の受け入れが終われば、年末年始用の収穫に取りかかります」と大内正博社長は話します。
大内家は代々、丹波篠山市今田町で水稲や黒大豆を中 心とした農業を営んでおり、大内社長自身も地元JA勤務 を経て、2004年に就農しました。当時、周辺の農家は高 齢化や後継者不足により耕作放棄地の増加が避けられな い状況でした。そのような営農が困難になった農家から 田畑の管理を依頼されることが増えていきます。農地を しっかり維持していくためには、担い手を育てる必要が あると考え、08年に法人化を果たしました。現在は20代 から60代までの7人の社員が働いています。
「丹波篠山」ブランドの後押しもあり、収穫した農産物 の大半を自主流通で販売しています。減農薬栽培にも積 極的に取り組み、「大内農場」としてのブランド力向上も 図っています。また、並行して大内農場の認知度を高め るため、06年からはバス会社と連携し、丹波黒大豆の収 穫体験が楽しめる観光農園事業を進めてきました。
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年中地域に人を呼び込めるように
2020年から拡大した新型コロナウイルス感染症の影 響を受け、観光農園の来園者は激減しました。大内社長 は以前訪ねた淡路島のイチゴ農園で大いに楽しめた経験 から、コロナ明けを見据えイチゴ農園とカフェをセット にした施設の整備に着手します。
まず、ひょうご産業活性化センターの農商工連携ファ ンド事業の助成金を活用し、尼崎市の(株)デザートプラン と組んでカフェメニューの開発に取り組みました。イチ ゴパフェやスムージーのほか、神戸市内の製あん業者を 紹介されてイチゴや黒大豆のあんを開発し、回転焼きも メニューに加えました。スムージー製造用の瞬間冷凍 機、回転焼き機の購入にも助成金を充てました。
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さらに、ビニールハウスにはモーターで上下動できる つり下げ式の苗レーンを導入。「通路スペースが不要なた め、一般の農園の1.5倍のイチゴを栽培できます」と大内 社長。イチゴ狩りの客がいる時は摘み取り用のレーンだ けを下げ、開放部分はカフェスペースとして使います。 23年にオープンし、2年目の今年はイチゴ農園だけで 1万人が来園するなど順調な滑り出しです。今年から次女が夏に収穫するマスカットの栽培を始め、年間で集客 できる体制も整いました。「周囲に飲食店が多いことか らフードメニューは外してカフェメニューに特化し、今 田町全体で潤えるようにしたい」と観光農園を生かした 地域貢献への思いも強めています。