B級品タマネギをキムチに商品化
メンバーで力合わせ売り上げ増を
目指す
南あわじ TEN TEN TEN
試行錯誤の末に完成
南あわじ市の農産物直売所で店長を務める茱萸健太さんが、「市場に出回らないB級品のタマネギを有効活用し、土産物になる商品を作りたい」と着想したのは5年ほど前のこと。所属する経営者グループ「南あわじ TEN TEN TEN」のメンバーに呼びかけたところ、そのうちの一人が南あわじ市商工会経営支援課の大上兵真さんを知っていたことから「異業種交流活性化支援事業」の活用につながりました。
「作った商品が売れてこそ、事業は意味を持つ」という大上さんの考えから、広報ジャーナリストの福満ヒロユキさんをアドバイザーに迎え、タマネギを使ったキムチを開発することに。当初は苦みや辛みが際立ち、難航を極めました。あらかじめ水分を抜くことが肝だと分かったものの、収穫時期で含水量が異なるため、通年で味が安定するまでに2年を要しました。
商品名は「かっこいい名前より、覚えやすい名前を」と、福満さんが考案した「キムチの玉様」に決定。パッケージはタマネギの皮をむくように開けられるデザインとし、裏面にはフードロス解消への思いや淡路島の特産品の情報を載せました。
メンバーそれぞれができることを
発売日は「キムチの日」に当たる2020年11月22日。事前のプレスリリースが功を奏し、新聞に取り上げられました。各メンバーの店や道の駅に商品を並べ、上々のスタートを切ったものの、製造能力に限界があるため売り上げの天井を設けていました。そこで「自分がメーカーになる」と立ち上がったのが、メンバーの一人で商品の試作を担当した松岡優司さんです。
福井県出身の松岡さんは南あわじ市にある吉備国際大学の農学部を卒業。産直施設勤務を経て、地域おこし協力隊に参加したことが縁でグループに加わりました。
「食品関係で起業したいと思っていました」と松岡さん。メンバーの店の一角を製造所として借り、茱萸さんの直売所に出入りしている農家からB級品を入手するルートを構築し、製造量は当初の3倍に増えました。
今年5月にはレタスを活用した第2弾商品「キムチのレタ姫」を発売。メンバーの武田諭さんは経営するアウトドアショップと自社の通販で2商品を販売するなど、メンバーそれぞれができることをしながら事業は自走しつつあります。南あわじ市は豊かな農水産物がありながら、それらを加工するメーカーが少ないことが6次産業化を阻んでいました。松岡さんが中心となってその役割を担うことで市内にとどまらず、県内の農水産資源を生かす役割を果たしていこうとしています。