従業員の感性を大切にしながら
短期かつ連続的にプロジェクトを創出
ハマックス株式会社
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大型転造の長寿命化を実現
同社の前身は1931年に長崎で創業した濱田屋商店で、当初は木製ボルトなど木造船に使われる締結部材を製造していました。95年に近畿圏のディーゼルエンジン部品を生産するために新設したのが姫路工場で、翌年にはこれを分社化し同社が誕生。その工場での勤務を志願したのが、当時入社間もない濱田康平社長でした。
「敷地と工場の十分な広さを生かし、材料を大量に調達して仕入れコストを抑えました。さらに、多種多様な舶用ディーゼルエンジンのボルトを主要6品種に絞り込んだことで、生産効率が大幅に向上し、販路拡大にもつながりました」。その結果、3%だった主要ボルトシェアを7年間で80%にまで高めました。
同社が得意とするのは、熱処理された硬い材料からねじを作る転造技術。転造とは、回転する棒状の加工素材に工具を押し当てて、ねじ山を作る方法です。際立つのは、3次元のシミュレーションモデルを使って、加工や熱処理の方法の違いによる金属疲労度を研究し、それを生かして製品の改善につなげている点です。「世界中を見渡しても大型転造加工の長寿命化に関する研究例はなく、自分でやるしかないと思いました」と話します。
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目指すはシンプルファクトリー
2008年のリーマン・ショックで業績が落ち込んでからは、工作機械向けのボールねじ加工、航空機エンジンに使われるシャフトの切削加工など積極的に新分野を開拓していきました。濱田社長はこれら新規事業の創出を「ロケットプロジェクト」と称しています。具体的には、顧客の要望を踏まえ、まずは既存設備を組み合わせて小規模の生産ラインからスタートし、軌道に乗った段階で安定供給する体制を整える手法です。短期間に1プロジェクトを立ち上げるサイクルを繰り返していきます。
ただ、事業が増えるにつれて、設備を効率よくやりくりするために各設備の稼働状況を把握する必要性が生じていました。そこで、ひょうご産業活性化センターの「ものづくり環境高度化等専門家派遣事業」を利用しました。「船舶や航空機の部品に携わる上で、生産プロセスと製品の品質保証は顧客との信頼関係で特に重要です。専門家に、設備投資から運用回収までのプロセスを学んだことで、経営の要諦を押さえることができ、生産管理システムの導入にめどがつきました」と話します。
転造加工技術の高さが評価され、「第4回ものづくり日本大賞」で優秀賞を受賞した同社。「顧客から選ばれる工場づくりを目指す中で、従業員一人一人の感性を生かせる環境を整え、ものづくりの新たな可能性を生み出したい」とあるべき姿を追求していきます。
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