一目ぼれの米蔵でカフェを開業
素材にこだわったメニューを提供
片岡家蔵CAFEきなり
築320年の米蔵を改装
格子構えの町家が点在し、石畳が敷かれた商店街「あぼし一番街」の一角に同店はあります。築320年の旧龍野藩大庄屋片岡家の米蔵を改装した店内には、片岡家に眠っていた調度品が置かれ、奥の小上がりまで落ち着きのある空間を創出しています。
店主の舘麻由さんは高校生の頃からカフェ巡りを好み、BGMや店主の人柄も含めた個人経営のカフェの雰囲気に引かれました。加えて、子どもが生まれてからは安全・安心な食に対する関心も高くなったそうです。安くて早いチェーン店の料理は体が受け付けず、それならば自分の手でカフェをつくろうとの思いが膨らみます。創業塾に通い、一緒に学んだ人の縁で米蔵の存在を知り、一目で気に入りました。
2000年以降、建物は使われておらず、内装や掃除は一からする必要がありました。真っ黒に汚れた梁はりは5回磨いてようやく木目が見えたと言います。「きれい好きな私でも3回心が折れかけました。埃を吸いながらの作業で3日間寝込んだこともありました」と苦笑いを浮かべ、当時を振り返ります。
テーブルは衣装だんすの長持ちのふたを活用し、「脚は斜め向かいのインテリアショップで付けてもらいました」と、既にあるものを大切にし、地域でお金を回すことを実践しています。ひょうご産業活性化センターの「商店街若者・女性新規出店チャレンジ応援事業」に応募し、補助金は改装費用に充てました。「申請書類を書いているうち、やりたいことが明確になりました」と言います。
老若男女が集まる店に
看板メニューのカレーライスには農薬5割減の淡路産タマネギ、パウンドケーキには県産小麦を100%使用し、コーヒーはフェアトレードの豆を焙煎する近隣の店から仕入れています。「自分が実際に食べて、おいしい、体が気持ちいい、そして地元で生産された素材を選んでいます」。そうしたこだわりはメニューに書かれていませんが、「会話の中でそれを伝えることで、お客さまの意識が少しでも変わるきっかけになれば」と話します。
料理に使う完全無農薬のニンニクと店内に飾る生花は近所の人から提供されるそうで、「多くの人の縁に助けられている」と話します。舘さんの理想は老若男女分け隔てなく集まる店。6月には姫路産ショウガを使った甘酢漬け作りのワークショップを開きました。「地域の特産物を使い、地域で買い物をし、地域でお金が回る。このお店がその一助になれば」と地域の活性化に思いを巡らせます。